みずこし動物病院

2010年03月06日(土)

誤食に注意 [病気に関するお話]

ここ1週間で立て続けに2件、誤食によって消化管閉塞をおこしたワンちゃんの手術をしました。

消化管内異物による手術はそんなにしょっちゅうあるわけではありませんが、毎年必ず何件か入ります。

1件目は石を食べていました。レントゲンを撮ったところ小腸の中に石が残っており、閉塞像(ガス貯留による小腸の拡張)も認められていたため、飼い主さんの希望もあり、その日のうちに開腹手術をして取りだしました。

2件目は1リットルの牛乳の紙パックをかじりながら飲み込んでおり、開腹したところ胃の中がちぎれた3.6%農協牛乳のパックでパンパンでした。

 レントゲン撮影によって確実に異物が確定できるのは、石や金属と骨だけです。意外に思われるかもしれませんが、ほとんどの消化管異物は単純レントゲン撮影では診断できません。 したがって異物が詰まっているのを確定するには消化管造影検査を行います。
 
 動物の口からバリウム(人間用です)もしくはヨード系水性造影剤を動物がむせないように気をつけながら無理やり飲ませます。正常であれば時間の経過とともに造影剤は胃から小腸を経て大腸へ流れていきます。時間がたっても胃から造影剤が流れなかったり、小腸の途中で造影剤がストップしてしまった場合、通過障害があることがわかります。「通過障害があるイコール何か詰まっているかも」と考えて開腹手術を行うのです。
 ただ、最近はエコー検査の機械の精度があがり、造影検査をする前にエコー検査で診断がつくことも多くなりました。ただしエコーの弱点は消化管内にガスがたまっているとエコーが見えなくなるので、これも万能ではありません。

 いざ、異物を除去する段階で、内視鏡も有用なツールです。うちの病院でも内視鏡を用いて異物を取りだすことが多くなりました。内視鏡のメリットはお腹を切らなくてよいので動物の侵襲が少とてもなくて済むことです。 しかし、内視鏡で除去可能なものは
1.異物が胃の中にあること。異物が小腸に流れてしまうと取れません
2.異物の数が数個であること 異物が多数の場合は内視鏡では時間がかかりすぎてしまいます。潔く開腹手術をしたほうが早く済み麻酔の時間が短くて済みます。
3.異物が鋭利でないこと・大きくないこと 異物が鋭利だと食道を通る際に大事な臓器(心臓など)を傷つける恐れがあります。また異物が大きすぎると食道に詰まって全く動かなくなり困ってしまう可能性があります。
以上のように内視鏡も万能ではありません。

個々の症例よってどの手技が一番ベストか飼主様と相談しながら決定します。

 動物は本当にいろんなものを食べちゃいます。場合によっては催吐剤を使ってむりやり吐かせる場合もあります。自分の経験のなかでも思い出すだけでいっぱいあります。
開腹および内視鏡で取り出したものは、石、骨付きフランクの骨、焼き豚を包んでいる網、トウモロコシの芯、目薬の容器、備長炭、硬貨、イヤホーンの金属部分(子猫)、ペットーシーツのゲル(水を吸ってパンパンになって腸を塞いでました)、軍手、ストッキング、串カツの串、タンポン、アイスクリームのバー(腸を突き破り腹膜炎を起こしていました)、銀杏を殻ごと大量、梅干しの種、桃の種、シャボン玉のキャップ、ビニールのチューブ、縫い針、自転車のカバー、スーパーボール、ひも状異物などです。
 むりやり吐かせたものは、お父さんの湿布、コンドーム、ビニール袋丸ごと、タバコ、人間用の薬大量摂取など柔らかいものや中毒を起こしそうなものです。

 皆様、動物の誤食には本当にご注意ください。




 

 
 

Posted at 17時50分

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