みずこし動物病院

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2010年12月21日(火)

食道内異物に注意!! [病気に関するお話]

食道内異物とは、食べたものが胃まで到達せずに、食道の途中で止まってしまう事をいいます。動物は悶絶し苦しみます。ここ最近2例ほど続きました。
 
 1例目はワンちゃんが飼い主さんの隙をついてリンゴの切れ端を飲み込んでしまったということでした。来院時には口からよだれを垂らし苦しそうでした。何とか飲み込もうとするのですが飲み込めず、吐きだそうにも吐き出せず、そのうち後ろ足がふらふらしだして、失禁してしまうようになってしまったので、診察時間中でしたが、診察をいったん打ち切って緊急で麻酔をかけました。
 内視鏡で観察すると胸部食道あたりでリンゴの切れ端がすっぽりはまりこみ、全く動かない状態でした。内視鏡沿いに異物鉗子を挿入し、リンゴをつまんで取ってこようと試みますが、つまんだ部分だけ崩れてしまってなかなかうまくいきません。仕方が無いので何度も何度も異物鉗子でリンゴをつまんで少しずつリンゴを崩していきました。最終的には半分ぐらいの大きさになってところですっぽりはまっていたリンゴが動き始めたので、内視鏡で残ったリンゴを胃まで押し込みました。これで無事完了です。胃まで入ってしまえば一安心です。その日の夜無事退院できました。

 2例目は呼吸停止の状態で病院へ駆け込んできました。一目見てかなりヤバイ状態なのが誰の目にも明らかでした。口元は泡だらけで、舌はでろんと垂れ下がってチアノーゼ(酸素不足で青紫色)を呈し、手足もぶらぶらで虚脱状態でした。「もう、死んでしまっているかも・・・・」と思いながらも、人工呼吸器を素早くセットしました。気管チューブを挿管しようと口を開けたところ、喉の入口に大きな大根の塊が引っ掛かっていました。急いで喉元の大根を取り除き、気管チューブを挿管し人工呼吸を行い、蘇生薬を投与すること数分後、自発呼吸が戻ってきました。飼い主さんが「大根を与えてたら喉に詰まった。」と行っていた通りでした。ラッキーな事に数分後、意識が回復しました。数時間で精神状態、呼吸状態ともに回復したため、この子も無事に退院できました。


 今回はラッキーにも2例とも無事退院できましたが、私はこれまで何度も残念な思いを味わっています。
飼い主さんが何か与えた直後に動物の異変に気づいて、慌てて病院へ駆け込んだものの、その時にはすでに窒息で死亡していたという経験がたびたびあります。

食道や喉に詰まりやすいものとしては
1.根菜類:イモ類、大根、カブ、ニンジンなど
2.果物:ナシ、リンゴ、パインなど
3.犬用ジャーキー
4.犬用デンタルガム
5.犬用おやつの豚の耳や蹄など
です。

可愛いワンちゃんを喜ばせるつもりで与えたおやつが結果としてワンちゃんの命を奪ってしまうような結果になるのは悔やんでも悔やみきれませんよね。

おやつは肥満の原因になるので、お勧めしませんが、どうしても与えなくてはならない場合やどうしても与えたい場合(人間のほうが)は、くれぐれも与える大きさに注意してくださいね。丸のみしても大丈夫な大きさを考えて与えるようにしてください。

Posted at 00時35分

2010年05月11日(火)

狂犬病予防注射を考えるパート3 [病気に関するお話]

今回は狂犬病予防注射も含めてワクチン全般の問題点です。

ワクチン接種は、体内に病原体を注入することによって体に抵抗力(抗体)をつける仕組みです。

もちろん、ワクチンに用いる病原体(ウイルス)は、病気を引き起こすものと同一ではありません。
もともとの病原体(ウイルス)を生きた細胞で何代も培養して、病原性が極めて弱いか、病原性が無くなったものをワクチンとして用います。これを生ワクチンと呼びます。それに対して病原体(ウイルス)を殺して(不活化といいます)、病原体(ウイルス)の構造の一部をワクチンとして使用するものを不活化ワクチンと呼びます。

一般論ですが、生ワクチンはウイルスが生きていますので、ワクチン効果が大変高く、抗体の上昇も良好であると言われています。ただし、ごくごく稀なケースですが、ワクチンウイルスが病原復帰性を持ってしまうケースがあるようです。もちろんワクチンメーカーはワクチンに使用する継代培養したワクチンウイルスが病原復帰性が無いことを確認しているにも関わらずです。

それに対して不活化ワクチンはウイルスは死んでいるので病原復帰性はあり得ませんのでかなり安全と考えられます。しかし、その反面、抵抗力をつける効果はいまいちと言われています。そのジレンマを解消するために「アジュバント」と呼ばれる免疫系の刺激を高めるものが添加されています。不活化ワクチンの場合はこのアジュバントが問題となるようです。ちなみに狂犬病ワクチンは不活化ワクチンです。


残念ながら狂犬病ワクチンも伝染病の混合ワクチンでも毎年、ごく僅かながらワクチンが原因と考えられる事故が起こっています。

重症例ではアナフィラキシーショックによる死亡、軽症例では嘔吐、顔面の腫脹などです。

 幸い私は狂犬病ワクチン・伝染病ワクチンを含めてアナフィラキシーおよび死亡には遭遇しておりません。しかし、顔面が腫れあがってしまうのは毎年何回か経験します。

大事なことは、ワンちゃんの体調と相談しながらワクチン接種をすることが重要です。

1.体調に不安がある時はけっして強引にワクチンをうたない
2.ワクチンをうつ場合は可能な限り午前中早い時間に(9:00〜10:30)に接種する。
3.飼い主さんが1日ワンちゃんの様子を見ることができる日に注射する。

 ワクチンがきっかけで体調を崩すことは絶対に無いとは言えません。体にない異物を体内に注入するわけですから、過敏反応が起こっても不思議ではありません。

 人間の場合でもワクチン接種と副反応の問題は必ずいつも出てきます。副反応に過敏になって予防接種を中止すると、そのあとワクチンを中止した世代で特定の感染症にかかりやすくなったり、いろいろワクチンを接種していないことによる問題を生じます。


しかし、ワクチン接種後に具合が悪くなるのは非常にまれなケースです。
伝染病に感染してから慌てても遅いのです。ワクチン接種そのもののリスクよりも、ワクチンを接種していなくて伝染病にかかってしまうリスクのほうがはるかに高いと思われます。狂犬病に関しては何度も言うように、清浄国を維持すること重要なのです。


かかりつけの獣医師と十分相談しながら、より安全なワクチン接種をしていきましょう。


Posted at 18時56分

2010年05月03日(月)

狂犬病予防注射を考えるパート2 [病気に関するお話]

狂犬病予防注射の話題の続きです。

少し古い資料ですが、世界での狂犬病の発生状況です。以下のアドレスにアクセスしてみてくださいhttp://nichiju.lin.gr.jp/ekigaku/keneki/kyouken.htm

狂犬病の発生国=狂犬病による死亡者がいる国ということになります。

ほとんどの地域で狂犬病による犠牲者が出ているのがお分かりいただけると思います。

狂犬病はほとんどすべての哺乳類が感染します。
犬ではウイルスの感染を受けると潜伏期、前駆期、興奮期、麻痺期に分けられます。
興奮期:痙攣が起こり死亡
麻痺期:痙攣期に生存した個体もやがて全身麻痺で死亡

ヒトではウイルスの感染を受けると、潜伏期、前駆期、急性神経症状期、昏睡期と続きます。発症した場合は100%死亡します。
繰り返しになりますが、潜伏期(症状が出てないうち)に適切な治療を受ければ、ほとんどの例で回復しますが、100%助かるわけではありません。治療を受けても死亡することもあります。
 症状が出てからあわてて医療機関に駆け込んでも、もはや手遅れであり死を待つしかありません。

 私たちが仕事や旅行で狂犬病の常在国へ訪問する場合、それなりの準備が必要です。
具体的には、
1.渡航前に狂犬病ウイルスに対する基礎免疫をつける。日本式とWHO式がありますが、日本方式では0日、30日、210日の3回、人用組織培養狂犬病ワクチンを接種します。これを狂犬病暴露前免疫といいます。
その後、現地の犬や野生動物に咬まれなければ問題ありません。

もし、現地の犬や野生動物に咬まれてしまったら狂犬病暴露後発症予防を行う必要があります。
 狂犬病感染疑いの動物に咬まれた場合、まず傷口を流水と石鹸で徹底的に洗浄します。そのあと消毒用アルコール(絶句するほどしみます)かポピドンヨード液(こっちのほうがしみません)で消毒します。ただちに現地の病院へ行き動物に咬まれたことを申告してください。
2.狂犬病暴露後発病予防(タイ赤十字法とエッセン法があります):傷口に抗狂犬病免疫グロブリンを注射します。免疫グロブリン製剤は狂犬病ウイルスと直接結合してウイルスを失活させます。同時に狂犬病ワクチンを接種します(0日)。その後3,7,14,30,90日の合計6回狂犬病ワクチンを接種します。

人間の場合、犬と比べて発症するまでの期間が長いため、咬まれてすぐ免疫グロブリンで可能な限り狂犬病ウイルスの活性をさげ、その後はワクチン接種によって被害者本人の免疫力を高め、狂犬病を発症させないというやり方です。

狂犬病常在地では加害者の動物(咬んだ動物)の対処法は以下のようになっているようです。
1.飼い主がわかっていて、動物が健康であり、狂犬病予防注射をしている場合:動物を拘束(繋留)して様子を見るだけでよい。
2.飼い主がわかっていても狂犬病予防接種をしていない場合:動物をただちに安楽死させて病理解剖し、狂犬病でないか調べる。
3.飼い主がいない場合:ただちに捕獲し安楽死、病理解剖を行う


つまり、狂犬病が存在している国では、狂犬病予防接種をしてない犬は、飼い主の有無、飼い主の好む好まざるにかかわらず、殺処分されて病理検査にまわされてしまうようです。


日本で万が一、犬の咬傷からヒトが狂犬病で死亡する事件が起こり、その犬が狂犬病注射未接種だった場合、果たして事件の当事者同士で話が済むのでしょうか?

日本の国民性を考えると、狂犬病予防接種をきちんと受けている犬ばかりでなく、犬の飼い主まで悪者扱いされるような気がします。すべての犬=狂犬病をばらまく悪い奴という風評となり、安易な飼い犬の投棄や殺処分の増加につながりはしないかと非常に危惧しています。

以上のことを考える(日本人の国民性、清浄国を保つ)と、現在の犬の狂犬病ワクチン接種の義務は必要と思います。
 繰り返しになりますが、日本国内に狂犬病が侵入してから対処していては駄目なのです。重要なのは、今現在の狂犬病清浄国を維持していくことが非常に大切なのです。


ただし、ワクチン自体が問題となるケースもあるので次回はそのあたりに触れてみます。

ちなみに、今回の情報源は
高山 直秀著 ヒトの狂犬病 忘れられた死の病 時空出版 

から引用させてもらっています。











Posted at 09時45分

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