みずこし動物病院

2010年05月02日(日)

狂犬病予防注射を考えるパート1 [病気に関するお話]

 ここ最近、狂犬病予防注射不要論を唱える輩が出てきています。
 中には「狂犬病予防注射は獣医師の既得権益を守るためだけに延々と続けられている。狂犬病予防注射が無くなると定期収入がなくなって困る獣医師がいるので、無意味な注射をずっと続けているのだ」と公言している人(マスコミも含める)もいます。

果たして本当にそうでしょうか? 

 仮に狂犬病予防注射から得る収入が無くなったとしても、予防注射の安さだけを売り物にしたワクチンメインの薄利多売の動物病院以外の動物病院はさほど影響を受けることはありません。
 狂犬病予防注射イコール獣医師の既得権益と考えている人たちは、一体どれだけ狂犬病予防注射で儲かると思っているのでしょうか?

 私には「狂犬病予防注射はいらない!!」と言っている輩が非常に無責任に思えます。
この輩たちは、過去に日本がどのようにして狂犬病を駆逐して、いまのような狂犬病の無い清浄国にしてきたか、また、狂犬病がどんなに恐ろしい病気か理解したうえで発言しているのでしょうか?

 新型インフルエンザの件は皆様の記憶に新しい事とおもいます。一度国内に病原ウイルスが入り込むとあっという間に蔓延し、常在化してしまうことは明らかです。その後、国内から完全に病原ウイルスがなくなるのは非常に困難です。

 狂犬病もまた然りで、万が一にも国内にウイルスが入ってきた場合、再び清浄国にするには非常に困難です。身近なところでは韓国が例に挙げられます。かつては韓国は狂犬病清浄国でしたが、いったん狂犬病の侵入を許してしまったため、現在では散発的ですが狂犬病による死者が出ています。同様なことが日本で起こったとすると日本国内がパニックに陥ってしまうことは想像にかたくありません。犬=狂犬病という発想になり、愛犬家は疎ましがられるようになるでしょう。

 こないだまで、狂犬病予防注射不要論を唱えていた無責任な輩(マスコミ含む)ほど、手のひらを返したように飼い犬の殺処分を唱えるかもしれません。


  狂犬病は新型インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)なんかと違って、発症すると死亡率100%なのを御存知でしょうか?

 狂犬病ウイルスを保有した動物にかまれた場合、発症する前に治療をすればほとんどのケースで助かりますが、万が一発症してしまうと、残念ながら死を待つばかりです。
 
 数年前フィリピンから帰国した男性が立て続けに2名、狂犬病を発症して亡くなっています。この方たちは現地で犬にかまれたものの、発症前に病院で狂犬病の治療をされていなかったため、残念な結果となってしまいました。

 私はけっして皆様を恐怖に陥れるために大げさな話をするわけではありません。

 あまりにも狂犬病に対する知識や情報が偏っているので、一開業獣医師として、ひとりでも多くの方が正しい狂犬病の知識を持っていたくためのきっかけになってくれたらと思い、この話題を掲げました。

話が長くなってしまうので続きは次回にさせてもらいます。 

ちなみに、今回の情報源は
高山 直秀著 ヒトの狂犬病 忘れられた死の病 時空出版 

から引用させてもらっています。

 

Posted at 09時47分

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