2009年08月01日(土)
ハムやん [院長日記]
久しぶりにジャンガリアン・ハムスターの手術をしました。2年ほど前に死産のジャンガリアン・ハムスターの開腹手術以来でしょうか?
実際、ハムスターの手術ってみなさん想像できますかね? 意外と手術対象になる病気は多いと思います。しかしながら、手術に至るまでのハードルが高いため、手術を施すまでいかないケースがほとんどです。
そのハードルとは?
1.麻酔のモニター・点滴が使用できない!!
通常、犬猫の手術では、麻酔のモニターを使用します。心電図、血圧、動脈血酸素飽和度(SpO2)、動脈血炭酸ガス分圧(EtCO2)、呼吸数、麻酔濃度を厳密にモニターしながら麻酔濃度を調節します。心拍数が下がったり、呼吸数が落ちたら麻酔深度を浅くします。心拍数が上昇したり、呼吸が浅くなり速くなったら(浅速呼吸)、麻酔深度を深くします。うちの病院では手術を執刀しない獣医師が麻酔モニターに回ります。しかーし、ハムやんはあまりにも小っさすぎて全てのモニターが使用不可能です。
つまり麻酔の管理は目視のみ、「」おーい息してるかー?呼吸リズムはええか?」「はいっ!!OKです。」「よーし、麻酔深度はこのままでええぞ。」こんな感じです。とても原始的ですね。
血圧に関しては、犬猫であれば「院長!!血圧が低下しました」「麻酔深度を下げて、点滴のスピードを今の1.2倍にアップしてくれ。」といったやり取りができます。ハムやんの血圧は神のみぞ知るといったところでしょう。
つまり、麻酔のモニターが全く使用できないため、当然麻酔のリスクは犬猫に比べてはるかに大きいです。いつの時代の手術ですかね。
2.血液検査ができない!!
犬猫ウサギであれば、麻酔前に血液検査をして麻酔に対するリスクの評価ができますがハムやんはできません。「ええい、なるようになれ‼」実際こんな感じです。
3.寿命が1〜2年
短命の動物にわざわざ痛い思いをさせるのかという問題が考えられます。
4.費用の問題
嫌らしい話ですが、ハムやん1匹飼うのに1000円かかりません。しかし手術となると獣医師側としては麻酔や縫合糸など原価は犬猫同様にかかります。すなわちハムやんの手術といえど数万円はかかってしまいます。
以上のことを時間をかけて説明させていただくとほとんど手術はやられません。
しかし、今日の飼い主様は違いました。今日テストがどうこう話をしておられたのでおそらく高校生ぐらいと思われました。数日前に来院されたときに1から4のお話をしてじっくり検討していただくこととしました。その結果「話はよーく理解した。こちらとしては手をこまねいてなにもせずに病気が悪化するのは我慢できない。リスクは十分理解した。手術をやってくれ。」いうことでした。お母様も特に口をはさむことなく「そっち(獣医師)の言ってることは良くわかった。子供の意見を尊重する。手術を頼む」ということでした。ここまで飼い主様が本気ならこちらも全力を尽くし、最大の注意を払い手術をしました。
幸い、麻酔中も呼吸は安定し、覚醒も良好で無事お返しすることができました。このまま問題なく抜糸まで行けることを祈っています。
今日わかったこと。まだ私は老眼ではありません。ハムやんの細かい血管などよーく見えました。
私の老眼などどうでもよいことは置いておいて、今日の飼い主様はこちらが尊敬してしまうようなしっかりした方たちでした。ほんとにうちのクライアントの皆様はしっかりした方が多いと思います。
しっかり勉強して皆様の期待に答えられる様な獣医師にならなくてはと思います。
Posted at 00時14分